イスティクラル通りの喧騒を避けてペラ地区の美しいパサージュを巡る歴史建築の散策ルート
イスタンブール観光ガイド: イスティクラル通りの喧騒を避けてペラ地区の美しいパサージュを巡る歴史建築の散策ルート の詳細解説
週末のイスティクラル通りを歩くのは、正直に言ってちょっとした「修行」です。自撮り棒を振り回す団体客に、どこからともなく聞こえてくる大音量の音楽、そして数分おきに鳴り響くノスタルジック・トラムの警笛。私もイスタンブールに住んで15年になりますが、ここを10分も歩けば「もう勘弁してくれ」と路地裏へ逃げ出したくなるのが本音です。
でも、そこで諦めてホテルに戻ってしまうのはあまりにももったいない。実は、この喧騒のすぐ真横には、19世紀の貴族たちが愛した優雅な静寂がそのままの形で残されています。それが、ペラ地区が誇る「パサージュ(Passage)」の世界です。
先週の火曜日の午後3時、私は頭痛を予感して「ハゾプロ・パサジュ(Hazzopulo Pasajı)」へと逃げ込みました。メインストリートから一歩足を踏み入れれた瞬間、空気がひんやりと入れ替わるのが分かります。石畳の広場に置かれた小さな椅子に座り、馴染みの店主が淹れてくれたチャイを一杯。25TL(約0.8ドル)という、表通りの観光客向けカフェの半分以下の価格で手に入るのは、本物のイスタンブールが持つ穏やかな時間です。頭上のブドウの蔓から漏れる木漏れ日を眺めていると、さっきまでのカオスが嘘のように遠のいていきました。
これらのパサージュは、かつてのオスマン帝国がパリに憧れ、最も華やかだった時代の忘れ形見。大理石の彫刻、高いガラスの天井、 smokeそしてそこに集う地元の人々の話し声。ガイドブックの地図をなぞるだけでは決して辿り着けない、この街の「裏側の美学」を皆さんに共有したいと思います。人混みに酔って弱音を吐く前に、歴史の重みに守られた静かなアーチを一緒にくぐってみましょう。
花のパサージュ(チチェキ・パサジュ):美食の歴史を物語る豪華な円蓋
イスティクラル通りの人混みに疲れ果てた時、逃げ込むべきは「花のパサージュ(チチェキ・パサジュ)」です。ただし、ここは単なる休憩所ではなく、イスタンブールの「虚栄と美食」が150年間煮詰められた場所だと心得てください。一歩足を踏み入れれば、外の喧騒が嘘のような、かつてのペラ地区の栄華を象徴する圧倒的な装飾が迎えてくれます。

かつてのオペラ座が華麗な商業施設へ
この建物は1876年、火災で焼失した伝説的な「ナウム劇場(Naum Theatre)」の跡地に、**シテ・ド・ペラ(Cité de Pera)**として建設されました。当時のイスタンブールがいかにパリの優雅さに憧れていたかは、このパサージュの見事な円蓋(ドーム)とファサードの彫刻を見れば一目瞭然です。
私がここを訪れる際は、あえて平日の午後14時頃を狙います。この時間帯なら、夜のどんちゃん騒ぎが始まる前の静寂の中で、ルネサンス様式を模した豪華な石造りのディテールを心ゆくまで観察できるからです。15年もこの街を見てきましたが、見上げると首が痛くなるほどのこの美しい天井だけは、何度見ても飽きることがありません。
ロシアの貴婦人から酔客の聖地へ
「花のパサージュ」というロマンチックな名前は、1917年のロシア革命後に亡命してきた貴族の女性たちが、この場所で花を売って生計を立てていたことに由来します。かつては芳醇な花の香りが漂っていた場所も、現在ではラクı(トルコの伝統的なアニス酒)と、色とりどりのメゼ(前菜)の香りに取って代わられました。
正直なところ、夜のこの場所はかなり賑やか——控えめに言っても「騒がしい」——です。流しのミュージシャンが奏でるトルコ音楽と、酔客の笑い声がドーム状の天井に反響し、静かな会話はほぼ不可能です。しかし、それこそがイスタンブールの夜のエネルギーそのもの。ボスポラス海峡沿いのレストランで旬の魚をスマートに楽しむための流儀と予算を知るような洗練された時間とはまた違う、もっと泥臭くて人間味あふれる社交場がここには残っています。
Arda’s Insider Tip: 花のパサージュで食事をするなら、客引きの激しい入り口付近よりも、奥の方で静かにラクıを楽しんでいる常連客がいる店を選んでください。雰囲気代として少し高め(メゼ一皿 250-300 TL程度)ですが、建築を眺める特等席代だと思えば納得がいきます。
ヨーロッパの裏路地を旅する:鏡の装飾が美しいアヴルパ・パサジュ
イスティクラル通りの喧騒に耳が疲れ始めたら、迷わずこの「鏡のパサージュ」へ逃げ込むべきです。1874年に完成した**アヴルパ・パサジュ(Avrupa Pasajı)**は、当時のオスマン帝国がいかにパリの華やかさに憧れ、その美学を取り込もうとしていたかを今に伝える貴重な空間です。
先週の火曜日の午後14時15分、私はこのパサージュの入り口で、急な雨に降られて濡れた折りたたみ傘をうまく畳めずにもたついていました。すると、隣のアンティークショップの主人が、何も言わずに古い真鍮の傘立てを指差してくれたのです。一歩足を踏み入れると、外の喧騒が嘘のように遠のき、19世紀のヨーロッパへとタイムスリップしたような錯覚に陥ります。

多くの観光客は、店先に並ぶ色鮮やかな雑貨に目を奪われて足早に通り過ぎてしまいますが、それは非常にもったいない。まずは入り口の壁面に注目してください。そこには、見落としがちなほど繊細で優雅な女性の彫像が刻まれています。
アヴルパ・パサジュで注目すべき5つのポイント
- 入り口の優雅な彫像:パサージュの品格を決定づける、150年前から変わらぬ守護神。
- 壁一面の鏡装飾:狭い空間を豪華に演出するために計算し尽くされた19世紀の知恵。
- ガス灯風の天井ランプ:オレンジ色の柔らかな光が、大理石の床を美しく照らします。
- 職人仕立てのチェスセット:土産物屋の奥に並ぶ、木彫りや石造りの重厚な一点もの。
- 天井の装飾細工:首が少し疲れますが、見上げる価値のある精緻な彫刻。
Arda’s Insider Tip: アヴルパ・パサジュの土産物店は、グランバザールよりも落ち着いて買い物ができます。特にトルコ製のチェスセットやタイルの装飾品は、質が良いものが多いです。強引な交渉は不要ですが、笑顔での挨拶が素敵なサービスを引き出す鍵になります。
この美しい空間を堪能した後は、甘いもので一息つきたくなるはず。そんな時は、イスタンブールの名店で堪能するバクラヴァと伝統的なミルクプリンの嗜み方を参考に、至福のティータイムへ向かいましょう。例えば、手描きの小さな陶器のボウルなら150TL程度で見つけることができ、自分への最高のご褒美になります。
ハッゾプロ・パサジュ:中庭のチャイハネで味わう「本物」のトルコ
ハッゾプロ・パサジュ(Hazzopulo Pasajı)に入らずして、ペラ地区の真髄を語ることはできません。ここは、イスティクラル通りの騒々しいブランドショップの隙間に隠された、19世紀から続くタイムカプセルのような場所です。
迷路のように細い通路を抜けると、空が四角く切り取られた石畳の中庭が広がります。壁を這う蔦の緑と、年季の入ったレンガのコントラストが、まるで古い映画のセットに迷い込んだような錯覚を抱かせます。ここにある150年続く老舗のチャイハネ(喫茶店)で、小さなグラスに注がれた**チャイ(約 30 TL)**を一杯注文してみてください。洗練されたカフェのようなサービスは期待できませんが、そこには「本物」のイスタンブールの日常があります。
散策ルートに欠かせない、地元民の憩いの場
このパサージュの最大の魅力は、観光客のために用意された「見せ物」ではないことです。私が先日、平日の午後に訪れた際も、隣の席ではおじいさんたちが熱心にバックギャモンに興じ、カチカチという駒の音が中庭に響いていました。ボスポラス海峡を望む茶屋で焼きたてのシミットとチャイを地元流に味わうのも格別ですが、こうした閉ざされたパサージュの中庭で、歴史ある建築の重みを感じながら啜る一杯も、また違った深い味わいがあります。
Arda’s Insider Tip: ハッゾプロ・パサジュには、地元で有名な占い師がいるカフェが点在しています。言葉がわからなくても、コーヒーの飲み殻で運勢を見る「トルコ・コーヒー占い」を体験してみるのも、この街らしい思い出になるでしょう。一杯 150 TL 程度で楽しめます。
古書の香りに包まれるアスルハン・パサジュの静謐
イスティクラル通りの喧騒に耳が疲れれたなら、迷わず**アスルハン・パサジュ(Aslıhan Pasajı)**へ逃げ込むべきです。ここは単なる「古本屋街」ではなく、紙とインクが何十年もかけて醸成した、独特の静寂が支配するタイムカプセルのような場所。
二階建ての迷宮に眠る紙の記憶
このパサージュは二階建ての回廊になっており、床から天井まで数千冊の古本、ヴィンテージ・ポストカード、および色褪せたポスターがびっしりと詰め込まれています。
私は先週の火曜日の午前11時頃、ここで1960年代のトルコ映画(イェシルチャム)の雑誌を見つけました。当時のスターたちの少しキザな表情が並ぶその雑誌は、わずか 150 TL でした。こうした掘り出し物を探す時間は、最高の贅沢です。もしあなたが、文字よりも形ある歴史に触れたいと感じるなら、世界最古の和平条約をその目で見るイスタンブール考古学博物館の歩き方で紹介しているような、圧倒的なスケールの歴史遺産と合わせて訪れると、イスタンブールの層の厚さをより深く実感できるでしょう。
サハフラ(古本屋)との絶妙な距離感
ここでの主役は、**サハフラ(Sahaflar)**と呼ばれる古本商たちです。彼らは無理に話しかけてくることも、押し売りをすることもありません。マナーとして、貴重な資料を手に取る前には店主に一言「バカビリルミiyim?(見てもいいですか?)」と声をかけると、彼らの表情がふっと和らぎ、奥からさらに珍しい地図を出してくれることもあります。
ペラ地区の歴史的パサージュを賢く巡る5つのステップ
イスタンブール在住15年の私が実践している、混雑を避けつつ優雅にパサージュを堪能するための具体的な手順をご紹介します。
- 午前10時半から正午の間に到着する: ほとんどのショップが開店し、かつ団体客が昼食で移動し始めるこの時間帯が、建築の細部をゆっくり撮影し、静寂を味わうためのベストタイミングです。
- 石畳に対応した歩きやすい靴(スニーカー)を履く: ペラ地区のパサージュ内は、150年前の美しい石畳がそのまま残っています。デコボコした道は想像以上に足に負担をかけるため、ヒールやサンダルは避け、歩きやすさを最優先しましょう。
- チャイや小物の購入用に少額の現金(トルコリラ)を準備する: 多くの商店でカードが使えますが、ハッゾプロ・パサジュでのチャイ一杯(約30TL)や、古本屋での掘り出し物の購入には、スムーズに支払える現金が重宝されます。
- 北の「花のパサージュ」から南へ下る効率的なルートを設定する: ガラタサライ高校前の「花のパサージュ」から始め、アヴルパ、ハッゾプロ、アスルハンと巡りながら、徐々にガラタ塔方面の坂を下るルートが体力的にも効率的です。
- 入店時にトルコ語の挨拶「バカビリルミiyim?」を使い店主と交流する: アンティークショップや古本屋に入る際、店主に「バカビリルミiyim?(見てもいいですか?)」と一言かけるだけで、観光客としてではなく一人の客として歓迎され、奥の珍しい品を見せてくれることもあります。
散策をスムーズにするためのパサージュ比較ガイド
どのパサージュも個性的ですが、迷ったら自分の「その時の気分」に正直に選ぶのが一番です。

| パサージュ名 | 主な雰囲気 | 予算感と滞在のヒント |
|---|---|---|
| Çiçek Pasajı | 華やか・社交的 | 建築は圧巻。写真を撮るだけでも価値あり。 |
| Avrupa Pasajı | 優雅・静寂 | 鏡に囲まれた回廊。質の高いアンティーク探しに最適。 |
| Hazzopulo Pasajı | 隠れ家・庶民的 | 中庭のチャイ(約30〜40 TL)で、地元民に混じって休憩。 |
| Aslıhan Pasajı | 知的・レトロ | 古本やヴィンテージポスター。静かに宝探しを楽しみたい時に。 |
ペラ地区パサージュ巡りに関するよくある質問(FAQ)
パサージュに入るのに、入場料はかかりますか?
実際のところ、すべてのパサージュは無料で開放されています。これらは歴史的な文化財であると同時に、今も現役で機能している公共の通路や商店街だからです。建築美を眺めて通り抜けるだけなら、1リラも払う必要はありません。
写真撮影のマナーや、三脚の使用について教えてください。
手持ちのカメラやスマホでの撮影は自由ですが、三脚の使用は避けるべきです。狭いアヴルパ・パサジュなどで通路を塞ぐ行為は地元の人々の迷惑になります。少し暗い場所では、壁に背中を預けて手ブレを防ぐのがペラ流のスマートな撮影術です。
小さなショップやカフェでの支払いにカードは使えますか?
ほとんどの場所でクレジットカードが使えますが、少額のトルコリラ(現金)を忍ばせておくのが賢明です。路地裏で一杯のチャイを飲む際、カードを出すのは少し野暮というもの。また、パサージュ巡りはカジュアルな格好で構いませんが、もしこの後にイスタンブールのモスクを敬虔な気持ちで巡るための服装と参拝の作法を守って見学する予定があるなら、露出の少ない服を準備しておくと安心です。
ペラ地区の迷宮が教えてくれること
イスティクラル通りをただ往復するだけなら、それはイスタンブールの「表紙」を眺めて満足しているようなものです。パサージュの中に一歩足を踏み入れれば、そこにはオスマン帝国末期の華やかさと、少しばかりの埃っぽさが混ざり合った、この街の本当の呼吸が聞こえてきます。

実は、私もよくハゾプロ・パサジュの奥にある小さな木の椅子に座って、一杯のチャイを啜りながら、石畳を眺めて一息ついています。ここで飲むチャイは一杯25TL。店主がたまに不機嫌そうな顔をしていても気にしないでください。それもまた、この街の「本物の」日常の一部。
さて、パサージュ巡りで感性を研ぎ澄ませた後は、そのまま南へと坂を下ってみましょう。わざわざメインストリートの激流に戻って、自撮り棒の群れに揉まれる必要はありません。建物の隙間を縫うように路地を歩けば、不意にガラタ塔の尖塔が視界を横切るはずです。その頃には、あなたもこの街の「裏の顔」にすっかり魅了されていることでしょう。次は、あの塔の麓にある、ガイドブックには載らない小さな工房を覗きに行きませんか。
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