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エミノニュの問屋街の二階に佇むリュステム・パシャ・モスクで至高のイズニックタイルを堪能する

イスタンブール観光ガイド: エミノニュの問屋街の二階に佇むリュステム・パシャ・モスクで至高のイズニックタイルを堪能する の詳細解説

鮮やかなイズニックタイルで埋め尽くされたモスク内部の至高の空間。

エジプシャン・バザールの迷宮に迷い込み、スパイスの強烈な香りと呼び込みの喧騒で頭がクラクラし始めたら、それはあなたが「異次元への入り口」を探すべきサインです。人混みをかき分け、問屋が並ぶ雑多な路地へ進んでください。そこにある、注意深く見ていないと見逃してしまうほど控えめな「秘密の階段」を一段ずつ上ってみるのです。

喧騒がふっと遠のき、視界が開けた先に現れるのは、16世紀の巨匠ミマール・スィナンが残した隠れた傑作、リュステム・パシャ・モスクです。一階が賑やかな商店街で、その二階に祈りの場があるというこの風変わりな構造。いかにも商人の街、イスタンブールらしい合理性と美学が同居していて、私はたまらなく好きなのです。

重い扉を押し開けると、そこには「世界で最も贅沢な青の小箱」が待っています。壁一面を埋め尽くすイズニックタイルの、吸い込まれるようなコバルトブルーと情熱的なトマトレッド。15年この街でプロとして活動している私ですら、ここに来るたびに「ああ、イスタンブールにいて良かった」と、つい独り言が漏れてしまうほどです。

ブルー・モスクの壮大さも否定はしませんが、あちらが「王者の風格」なら、こちらは「宝石箱の親密さ」。観光バスの列から離れ、地元の人々に混じってこの静寂に身を浸すことこそ、真のイスタンブール体験だと思いませんか?さあ、この「青の迷宮」の正しい歩き方をお教えしましょう。

喧騒の問屋街に隠された「秘密の入り口」を探して

イスタンブールで最も美しい場所の一つが、なぜこれほどまでに見つけにくいのか、時々本気で首を傾げたくなります。世界遺産の街で15年も案内をしていますが、このリュステム・パシャ・モスクの「隠れ家感」は別格です。世界中の建築家が嫉妬するような至宝が、庶民的な台所用品店の真上にあるなんて、誰が想像できるでしょうか?

エミノニュの喧騒の中、スパイス・バザールの裏手に広がるハスィルジュラル通りは、まさにカオスそのもの。段ボールを積んだ荷車が足元をかすめ、スパイスとコーヒーの香りが鼻を突き、客引きの声が響き渡ります。イスタンブール公共交通機関完全ガイドを駆使してエミノニュ駅に辿り着いたばかりの旅行者なら、この熱気に圧倒されて、目指すモスクをうっかり通り過ぎてしまうのが「お約束」の展開です。

「二階建て」というオスマン流のリアリズム

普通、モスクといえば広い庭園の中央に堂々と鎮座しているものですよね。しかし、リュステム・パシャ・モスクは違います。地上階にはずらりと商店が並び、礼拝堂本体はその「二階」にあるのです。これはワクフ(公益財団)というシステムが生んだ、非常に合理的、かつちゃっかりしたオスマン建築の知恵。一階の商店からの賃料で、モスクの維持費を賄おうという魂胆です。神聖な場所の真下で商売をするなんて、なんとも商人の町、エミノニュらしいと思いませんか?

迷宮の入り口を見つける方法

このモスクへ入るには、建物の一角にひっそりと口を開けている、薄暗く細い石造りの階段を探し出す必要があります。「え、ここを登っていいの?」と不安になるような、生活感溢れる階段です。しかし、勇気を出してその段を一段ずつ踏みしめてください。

Arda’s Insider Tip: モスクの入り口を見つけにくい時は、周囲の問屋で働くおじさんたちに『Rüstem Paşa?』と聞いてみてください。指差す方向に、小さな階段が必ず見つかります。


リュステム・パシャ・モスクへの到達手順

  1. エミノニュ駅を降りる: トラムやフェリーを降り、地下道を抜けてスパイス・バザール方面へ向かいます。
  2. ハスィルジュラル通りへ入る: スパイス・バザール(エジプシャン・バザール)の西側の出口を出て、問屋が密集する通りを直進します。
  3. ドームを視標にする: 左右に並ぶ台所用品店を眺めながら、建物の隙間から見える鉛色のドームを探してください。
  4. 階段を見落とさない: 通りの右側、あるいは左側に現れる(入り口は複数あります)、モスクの基部へと続く石造りの細い階段を見つけます。
  5. 階段を上りきる: 階段を上り、喧騒が嘘のように消える中庭のテラスへと進み、目の前に現れる青の世界に備えてください。

問屋街の2階部分に建てられたリュステム・パシャ・モスクの外観。

巨匠ミマール・スィナンが手掛けた、控えめながらも贅沢な空間

「大きいことはいいことだ」という安直な価値観は、この場所では一切通用しません。 オスマン帝国の天才建築家ミマール・スィナンが、時の大宰相リュステム・パシャのために設計したこのモスクは、スレイマニエ・モスクのような圧倒的な威圧感とは無縁の、極めてプライベートで濃密な美学に満ちています。

権力者が愛した「秘密の宝石箱」

リュステム・パシャは、スレイマン大帝の娘婿であり、帝国で最も裕福で実力のある政治家の一人でした。彼は自らの権力を誇示するために巨大なドームを空に突き立てる道を選ばず、「内側の質」を極めることにこだわりました。スィナンの代表作や、その弟子が手掛けたブルーモスク(スルタンアフメット・ジャーミィ)が「公共の象徴」としての美しさを持つなら、ここはまさに「個人のための宝石箱」です。

歴史愛好家の間では、リュステム・パシャは少々ケチで計算高く、あまり人望がなかった人物として皮肉交じりに語られることもあります。しかし、ことタイルに関しては、驚くほど気前が良かったようです。問屋街の喧騒の上にひっそりと浮かぶこの空間は、「地下宮殿」の幻想的な静寂へ:リニューアルしたイェレバタン・サライで歴史の深淵に触れるが持つ歴史の重みとはまた異なる、高密度な色彩の美しさを湛えています。

スィナンが計算した「静」と「動」

スィナンの凄さは、一階を店舗(現在の問屋街)にしてモスクを二階に配置した構造にあります。地上の騒がしい商売の音から切り離された礼拝堂へ階段を上るたび、日常が遠のき、贅沢な別世界へと誘われる――。このドラマチックな演出は、15年の経験を持つ私から見ても、イスタンブールの建築物の中でトップクラスの巧妙さです。

「広さで圧倒するのではなく、密度で溜息をつかせる」。それが、オスマン帝国の絶頂期を支えた実力者たちの、洗練された、そして少しばかり排他的な「美の遊び」だったのでしょう。一歩足を踏み入れれば、その意図が痛いほど伝わってくるはずです。

壁一面を埋め尽くす「イズニック・ブルー」の輝きに溺れる

正直に言いましょう。もしあなたが「イズニックタイルの最高傑作」をたった一箇所で見たいなら、行列の絶えないブルー・モスクではなく、間違いなくこのリュステム・パシャ・モスクを選ぶべきです。

なぜこれほどまでに質の高いタイルが、このこぢんまりとした二階建てのモスクに集中しているのか?その理由は、施主であるリュステム・パシャが、当時のオスマン帝国で最も裕福な大宰相であり、時の皇帝スレイマン大帝の娘婿だったからです。彼はその財力と権力を惜しみなく注ぎ込み、当時絶頂期にあったイズニック陶器の工房に、最高級の特注品を注文しました。結果としてここは、16世紀のトルコ陶芸の粋を集めた「タイル尽くしの宝石箱」となったわけです。

緻密な文様に込められた自然への賛美

一歩足を踏み入れれば、そこは青の迷宮です。壁一面を埋め尽くすコバルトブルーの輝きは、電気のない時代にはどれほど神秘的に映ったことでしょう。

ここで注目してほしいのは、そのモチーフの多様性です。特にチューリップ文様は、オスマン帝国において神(Allah)の象徴とされ、このモスク内だけでも数十種類もの異なるデザインのチューリップを見つけることができます。

  • 風にそよぐような優美な曲線。
  • 幾何学的に配置されたカーネーションやヒヤシンス。
  • 生命力にあふれた「生命の樹」。

これらは単なる装飾ではなく、地上の楽園を再現しようとした職人たちの祈りの形なのです。これほど近くで、しかもこれほどの密度で至高の美を鑑賞できる場所は、世界中探しても他にありません。

職人の意地が作り出した「奇跡の赤」

そして、マニアなら絶対に見逃せないのが「赤」のタイルです。この時代のイズニックタイルには、盛り上がるように厚く塗られた、トマトのような鮮やかな赤色が使われています。

実はこの赤、焼成温度の管理が極端に難しく、イズニックの黄金期である16世紀後半のわずか数十年間にしか作られなかった幻の色なのです。後世の職人が真似しようとしても、黒ずんだり茶色くなったりしてしまい、このリュステム・パシャ・モスクで見られるような瑞々しい赤は再現できませんでした。

「昔の人のほうが技術が高かったなんて、現代の私たちは一体何をしているんだ?」と、つい皮肉の一つも言いたくなりますが、その答えはこの壁を見れば一目瞭然です。もし、この美しさを自分の生活にも取り入れたいと思ったなら、安価なプリント品ではなく、職人の魂がこもった本物のイスタンブール土産を探す審美眼を、この場所で養っておくのが正解です。この界隈の歴史をもっと深く歩くなら、オスマン帝国の商いの面影を残すエミノニュの大隊商宿ヴァーリデ・ハンを歩くも併せてチェックしてみてください。

Arda’s Insider Tip: 午後の日差しが差し込む時間帯は、青いタイルの色が最も美しく反射します。タイル自体の輝きを撮るなら、14時〜15時頃がベストです。

リュステム・パシャ・モスクで見逃せない5つのタイル・ポイント

  1. 「トマト・レッド」の立体感: 指で触れることは厳禁ですが、横から覗き込むと赤色の部分だけがぷっくりと盛り上がっているのが分かります。
  2. ミフラーブ(メッカの方向を示す壁): ここはモスクで最も神聖な場所. 周囲を囲むタイルの贅沢さはため息ものです。
  3. 柱を包み込むタイル: 壁だけでなく、太い柱の四方も隙間なくタイルで覆われています。これだけの面積を特注品で埋める予算があったことに脱帽です。
  4. 回廊の外壁: 礼拝堂に入る前の屋外回廊にも素晴らしいパネルがあります。特に大判のパネルは、一枚の絵画のような迫力です。
  5. 80種類以上のチューリップ: 誇張ではなく、本当にそれ以上のバリエーションがあります。自分だけのお気に入りの一輪を探してみてください。

鮮やかなイズニックタイルで埋め尽くされたモスク内部の至高の空間。

訪れる前に知っておきたい、参拝の心得とスマートな歩き方

リュステム・パシャ・モスクを訪れるなら、そこが単なる「タイルのギャラリー」ではなく、今も熱心な祈りが捧げられる神聖な場所であることを片時も忘れてはいけません。 観光客がやりがちな「自分たちが主役」という振る舞いは、この静謐な空間ではあまりに野暮というものです。

礼拝時間という「聖域」を避ける

モスク見学の鉄則は、1日5回の礼拝時間(エザンが聞こえてから約30分間)を避けることです。特に金曜日の正午過ぎは、地元の信者たちで溢れかえります。せっかく階段を登ったのに、入り口で途方に暮れる姿はあまりスマートとは言えませんよね。見学は礼拝の合間の時間を狙いましょう。

服装は「リゾート」ではなく「敬意」を

女性はスカーフで髪を覆い、肌の露出を控えるのがルールです。入り口で貸し出しもありますが、お気に入りの一枚を持参するのがイスタンブール上級者というもの。男性も短パンは避け、礼儀正しい服装を心がけてください。靴を脱いで絨毯に上がる際、穴の開いた靴下を履いていないかチェックするのも、大人の嗜みです。エミノニュの雑踏を物価変動の激しいイスタンブールを賢く歩くための両替とカード決済の使い分け術をマスターしたあなたなら、こうした精神的なマナーも難なくこなせるはずです。

写真撮影は「音」を消して

タイルが美しすぎて連写したくなる気持ちは分かりますが、**フラッシュは厳禁、シャッター音も控えめに. ** お祈りをしている人へレンズを向けるのは論外です。おすすめの画角は、入り口のポーチ(回廊)にある壁一面のタイル。自然光が入り込むこの場所は、内部よりもタイル一枚一枚の色の深みが際立って見えますよ。

よくある質問(FAQ)

入場料はかかりますか?

入場は無料ですが、モスクの維持管理のための寄付を強く推奨します。入り口付近に寄付箱がありますので、100リラ程度の現金をスマートに入れるのが良いでしょう。これだけの至高の芸術を無料で公開してくれていることへの感謝を、形にして示すのが旅人のマナーです。

女性がスカーフを持っていない場合はどうすればいいですか?

入り口で無料の貸し出し用スカーフや、体を覆う布が用意されています。ただし、多くの観光客が利用するものなので、衛生面が気になる方はご自身でストールを持参することをおすすめします。お気に入りのスカーフを巻いてタイルの前で佇む方が、写真映えも格段に良くなります。

内部の撮影に三脚は使えますか?

いいえ、三脚や自撮り棒の使用は禁止されています。他の参拝者の邪魔になりますし、神聖な場所での大掛かりな撮影は好まれません。手持ちのカメラやスマートフォンで、周囲に配慮しながら静かにシャッターを切りましょう。機材に頼るより、まずはその美しさを自分の目に焼き付けてください。

モスク内部を照らすシャンデリアと壁面の美しい装飾ディテール。

タイルを堪能した後は、エミノニュの甘い誘惑へ

至高のタイルを鑑賞した後に必要なのは、脳にガツンとくる強烈な糖分、つまりバクラヴァ以外にありません。リュステム・パシャ・モスクの階段を下り、問屋街の喧騒に戻った瞬間、鼻をくすぐる香ばしいバターの香りに抗うのは不可能でしょう。

迷わず老舗へ、甘美な地獄へ

エミノニュ界隈には数多くの菓子店がありますが、失敗したくないなら「ハフィズ・ムスタファ」のような有名店へ。ここのバクラヴァは、40層にも重なる薄い生地が口の中で弾ける食感が命です。ただ、あまりの甘さに「喉が焼ける!」と驚くかもしれません。そこで、イスタンブールの名店で堪能するバクラヴァの作法を思い出してください。一口食べて、その強烈な甘さを楽しむのがトルコ流です。

チャイがつなぐ、地元の人々との時間

甘い誘惑を中和させるのは、これまた熱いチャイ(紅茶)です。洒落たカフェも良いですが、問屋の軒先にある小さな椅子に腰掛けてみませんか? 「チャイはある?」と聞くだけで、隣の商人が場所を空けてくれるはず。砂糖は入れず、茶葉の渋みをダイレクトに味わうのが、バクラヴァとの最高のペアリングです。

混雑しているからといって素通りするのはもったいない。人混みを縫って手に入れた一皿と一杯のチャイこそ、エミノニュという街の活気を五感で味わう最短ルートなのです。

リュステム・パシャ・モスク内部を彩る至高のイズニックタイルと装飾。

まとめ

エミノニュ의 迷路のような問屋街で、偽ブランドのTシャツや山積みの乾物に囲まれていると、まさか自分の頭上にこれほどまでに鮮やかな極彩色の宇宙が広がっているとは誰も想像しないでしょう。ブルー・モスクの影に隠れがちなこの場所ですが、私に言わせれば、大行列に並んで観光客の熱気に酔うよりも、ここで静かにタイルの一枚一枚と対話する方がよっぽど贅沢な時間の使い方です。

ただし、階段を一歩上がればそこは下界の喧騒とは切り離された聖域。私たちが「芸術」としてタイルを眺めているすぐ傍らで、誰かは人生の切実な祈りを捧げているということを忘れないでください。カメラのシャッターを切る前に、まずはその静寂を胸いっぱいに吸い込んでみてください。

階段を降りて再び雑踏の中に戻ったとき、あなたの目には、さっきまでと同じエミノニュの景色が少し違って映るはずです。このモスクを見つけられたあなたは、もう単なる「観光客」ではありません。私たちが愛するイスタンブールの、本当の深みに触れた一人の「旅人」なのです。さて、この秘密の場所、あまり多くの人に教えすぎないでくださいね。私たちの静かな隠れ家が、これ以上混み合ってしまっては困りますから。

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