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観光ツアー

蒼い海に包まれて、静寂と文学を巡る:プリンス諸島「ブルガズアダ」で過ごす、大人のための余白の時間

ブルガズアダまたはプリンス諸島と思われる場所から、青い海と緑の丘を見下ろすベンチと松の木。静寂な余白の時間の風景。

イスタンブールの喧騒から逃れ、フェリーのデッキで潮風を浴びること1時間。カモメの鳴き声とともに辿り着くのは、時計の針がゆっくりと動く魔法の島「ブルガズアダ」です。観光地化された大島(ブユックアダ)とは一線を画す、静寂と文学の香りが漂うこの島の魅力を、在住15年の私Yukiがこっそりお教えします。

都会のノイズで少し疲れたなと感じる時、私が決まって足を運ぶのがこの島です。マルマラ海の深い青に包まれたブルガズアダには、五感を優しく解きほぐしてくれる穏やかな空気が流れています。ジャスミンが香る細い路地、坂道に佇む優雅な木造ヴィラ、そしてトルコ文学を代表する作家サイト・ファイルが愛した風景。ここは、単なる観光地ではなく、自分自身を取り戻すための贅沢な「余白」を愉しむ場所なのです。

それでは、ガイドブックには載っていない、ブルガズアダで過ごす最高に贅沢な大人の休日プランを一緒に紐解いていきましょう。

海を渡る贅沢:フェリーから始まる大人の遠足

イスタンブールの喧騒を離れ、静寂が流れる島「ブルガズアダ」へ。2026年の今も、この島への旅はフェリーから始まります。目的地に到着するまでの約1時間、海の上で過ごす時間こそが、この旅の最高のプロローグです。

ブルガズアダへのステップガイド

  1. 桟橋へ向かい、船に乗り込む まずは、旧市街のエミノニュ(Eminönü)か、新市街のカバタシュ(Kabataş)にある桟橋へ向かいましょう。チケット代わりのイスタンブールカードをかざして改札を通る瞬間、旅の期待が高まります。乗り場や時刻表が不安な方は、事前にイスタンブール公共交通機関の情報を確認しておくとスムーズですよ。

  2. 船上の「お決まり」を愉しむ 船が動き出したら、ぜひデッキの席を確保してください。ここで欠かせないのが、トルコの伝統的な「チャイ(小ぶりなグラスで提供される紅茶)」と、香ばしい「シミット(たっぷりの胡麻をまぶした輪っか型のパン)」です。セラー(売り子)からチャイを買い、カモメにシミットをひと欠片分け与える――そんな地元流の贅沢を味わってみてください。

  3. 移りゆく景色に身を委ねる 船はボスポラス海峡の象徴的な景色を背に、穏やかなマルマラ海へと進んでいきます。近代的なビルや歴史的なミナレットが遠ざかり、あたりが青一色に包まれる頃、心の中の「余白」が広がっていくのを感じるはずです。

島へのアプローチは、日常を脱ぎ捨てるための大切な儀式。心地よい潮風を感じながら、大人の遠足を始めましょう。

時を止めた洋館と蒼い海:ブルガズアダの街並みを歩く

フェリーを降りて一歩足を踏み出すと、まず驚くのはその「音」の変化かもしれません。2026年の今も、ブルガズアダでは一般車両の走行が禁止されています。聞こえてくるのは、潮騒と鳥のさえずり、そして時折通り過ぎる電動カートの静かな駆動音だけ。ここでは、都会の喧騒は遠い異国の出来事のように感じられます。

オスマンの残り香を纏う、木造洋館の美学

坂道をゆっくりと登っていくと、**オスマン帝国時代から受け継がれてきた優美な木造洋館(Köşk:キョシュク)**が姿を現します。それは単なる古い建物ではなく、この島の記憶そのものです。

  • 繊細な木彫り装飾: レースのように細やかな装飾が施されたバルコニーは、かつての貴族たちの優雅な暮らしを物語っています。
  • 色彩のコントラスト: 海風に吹かれて味わいを増した白い木の壁に、鮮やかなブーゲンビリアのピンクと、甘く香るジャスミンの白が寄り添うように咲き誇ります。
  • 静寂の路地: どこを切り取っても絵画のような路地を、あえて目的地を決めずに歩くのが「大人」の贅沢です。

2026年の今、ここにある「変わらないもの」

世界情勢や経済がどれだけ変化しても(現在1ユーロ=50リラ、1ドル=45リラという時代ですが)、この島を包む空気の透明感は変わりません。移動手段は電動カートか自転車、あるいは自分自身の足。利便性を手放すことで得られる、贅沢な「静寂」がここにあります。

Yukiのインサイダー情報: 島内には本格的なビーチはありませんが、小さな入江がたくさんあります。地元の人に混じって岩場から海に足を浸すなら、タオルを一枚持参するのがYuki流の楽しみ方です。

プレースホルダー画像

文豪サイト・ファイクが愛した風景:博物館を訪ねて

海と人々を慈しんだ「トルコのモーパッサン」

ブルガズアダを語る上で欠かせないのが、トルコの国民的作家サイト・ファイク・アバスヤヌクの存在です。「トルコのモーパッサン」と称される彼は、日常の何気ない美しさや、海と共に生きる庶民の姿を慈しむような筆致で描き続けました。彼が晩年を過ごした白い木造の邸宅は、現在は「サイト・ファイク博物館」として大切に保存されています。

館内に一歩足を踏み入れると、彼が愛用した眼鏡や万年筆、そして執筆の合間に海を眺めたであろう窓辺が当時のままに残されており、まるで今も彼がそこにいるかのような静謐な空気が流れています。彼は着飾った社交界よりも、島の漁師たちと語らい、波音に耳を傾ける時間を何よりも愛しました。その飾らない温かさが、ブルガズアダという島全体のアイデンティティにも深く根付いているように感じます。

イスタンブールで見られる活気あふれる下町歩きの楽しさとはまた一味違う、文学の香りが漂う「静の魅力」がここにはあります。展示された手書きの原稿や遺品を眺めていると、彼が愛したこの島の青い海が、いかに彼の魂を癒やし、創作の源泉となっていたかが伝わってくるはずです。

Yukiのインサイダー情報: サイト・ファイク博物館は月曜日と火曜日が休館日(時期により変動あり)です。文学好きの方は、事前に開館時間をチェックして、島での散策ルートを組んでくださいね。

心洗われる聖域:アヤ・ヨアニ教会と丘の上の絶景

歴史の重みに触れる、地下の物語

サイト・ファイルゆかりの地を巡った後は、もう少し島の奥深くへと足を進めてみましょう。まず訪れてほしいのが、美しいドームが象徴的なアヤ・ヨアニ教会(聖ヨハネ教会)です。11世紀にまで遡る歴史を持つこのギリシャ正教の教会には、実は地下の牢獄跡が今も静かに眠っています。かつて高僧が幽閉されていたというその場所は、ひんやりとした静寂に包まれており、島の華やかな明るさとは対照的な、思わず背筋が伸びるような神聖な空気を感じさせてくれます。

空と海が交差する、バイラクテペへのハイキング

教会を後にしたら、心地よい潮風を感じながら島の最高地点であるバイラクテペ(トルコ語で「旗の丘」という意味です)を目指してハイキングを楽しみましょう。坂道は少し急ですが、2026年の今も変わらない松林の香りと、時折聞こえる鳥のさえずりが疲れを忘れさせてくれます。

頂上に辿り着いた瞬間、目の前に広がるのは言葉を失うほどの絶景です。真っ青なマルマラ海に浮かぶ隣島のヘイベリアダやクナルアダ、そして遠くに霞むイスタンブールの街並み。頂上の茶屋で、50リラ(1ユーロほど)の温かいチャイを片手に360度のパノラマビューを独り占めする時間は、何にも代えがたい贅沢です。日常の喧騒をリセットし、自分自身を取り戻す。これこそが、ブルガズアダで過ごす大人の「余白の時間」の醍醐味と言えるでしょう。

波音を聞きながら「ラク」を嗜む:海辺のメイハネ体験

ブルガズアダでの一日の締めくくりに欠かせないのが、海辺で楽しむ夕食の時間です。イスタンブールっ子にとって、島の夜といえば「メイハネ(お酒と食事を楽しむ伝統的な居酒屋)」で、波の音を BGM にゆっくりと杯を交わすこと。

絶景の老舗「Kalpazankaya」と港沿いの活気

島には素敵なレストランがいくつかありますが、なかでも特別なのが、島の西端に位置する老舗 Kalpazankaya(カルパザンカヤ) です。夕陽が海に溶けていく様子を眺めながら食事を楽しめる、まさに大人のための特等席。もう少し賑やかな雰囲気がお好みなら、フェリー乗り場周辺の港沿いにあるメイハネもおすすめです。どの店も、その日に揚がったばかりの新鮮なシーフードが自慢です。

メゼと「ラク」が織りなす至福の時間

メイハネでの主役は、メゼと呼ばれる種類豊富な小皿料理です。焼きナスをペースト状にした香ばしいサラダや、タコのグリル、そして旬の地魚のフリット。これらを少しずつ、時間をかけて味わうのがメイハネでの粋な過ごし方です。

そして、この料理に合わせるのが、トルコの伝統的なアニス風味の蒸留酒「ラク」です。無色透明のラクに水を注ぐと、一瞬で白濁する様子は「ライオンのミルク」とも呼ばれます。アニスの独特な香りと、水で割ることで生まれるまろやかな甘みが、シーフードの旨味を驚くほど引き立ててくれます。

2026年現在の、ブルガズアダでのディナーの目安をまとめました。

項目平均的な予算・時間備考
ディナー予算(1名)1,800 〜 2,800 TL料理・ラク込み(約36〜56ユーロ相当)
メゼ(小皿料理)200 〜 350 TL1皿あたりの目安
ラク(350mlボトル)1,200 〜 1,600 TL2〜3人でシェアするのに最適
おすすめの時間帯18:30 〜 21:00夕陽から夜景へ変わるマジックアワー

都会の喧騒から切り離された島で、グラスを傾けながら大切な人と語らう。そんな余白の時間こそが、ブルガズアダが私たちにくれる最高の贅沢なのかもしれません。

旅を完璧にするために:ブルガズアダ訪問のコツと持ち物

ブルガズアダでの穏やかなひとときをより心地よいものにするために、現地在住の私からいくつか実用的なアドバイスをお伝えしますね。

スマートに旅するための事前準備

島へのアクセスはフェリーが基本です。以下の2点は必ず押さえておきましょう。

  • イスタンブールカード(Istanbulkart)の準備: 公共交通機関に欠かせないこのカードは、乗船前に十分な金額をチャージしておきましょう。2026年現在、物価の影響で運賃も変動していますが、カードがあれば小銭の心配をせずスムーズに乗船できます。
  • 最新の時刻表を確認: フェリーの便数は季節によって変わります。帰りの便を逃さないよう、事前に公式サイトでチェックするか、到着時に桟橋で復路の時刻表を確認しておくのが安心です。

快適に過ごすための持ち物

大人の島歩きを快適に楽しむための必須アイテムです。

  1. 歩きやすい靴: 坂道や風情ある小径を散策するため、履き慣れたスニーカーなどがベストです。
  2. サングラスと日焼け止め: 海からの照り返しは想像以上に強いので、日帰り旅行でも紫外線対策は忘れずに。
  3. 羽織るもの一枚: 街中が暑くても、船の上や夕方の島内は海風で冷えることがあります。薄手の上着があると重宝します。

他の島との使い分け

観光地として賑わうブユックアダ(Büyükada)が「動」なら、ここブルガズアダはまさに「静」。華やかな観光プログラムよりも、波の音を聞きながら読書をしたり、何もしない贅沢を味わったりと、心に余白を作りたい時にこそ訪れてほしい特別な場所です。

Yukiのインサイダー情報: 夕暮れ時に島を出るフェリーは混み合うことが多いです。沈む夕日を船上から眺めたいなら、出航の20分前には桟橋に並んで、進行方向右側の席を確保するのがポイントです!

結論

イスタンブールに15年暮らす私にとって、ブルガズアダは単なる観光地ではなく、心が少し疲れた時に逃げ込む「秘密のシェルター」のような場所です。ここでは、ガイドブックを一度閉じて、ただ海を眺めるだけの贅沢を自分に許してあげてください。

都会の喧騒を離れ、波の音と潮風に身を委ねる時間は、何よりの「自分へのご褒美」です。効率やスピードを求める日常から一度降りて、この島が持つ静寂と文学の香りに浸ることで、あなたの心にはきっと新しい余白が生まれるはず。

最後に、私からのアドバイスを。島へ行くなら、あえて「何もしない」という贅沢な計画を立ててみてください。お気に入りの一冊を片手に、海沿いのカフェでゆっくりと過ぎゆく時間を味わう。それこそが、ブルガズアダで過ごす最高に豊かな大人の時間の過ごし方なのですから。

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