ユスキュダル駅から乙女の塔までボスポラス海峡の夕景とオスマン建築を巡る歩き方
イスタンブール観光ガイド: ユスキュダル駅から乙女の塔までボスポラス海峡の夕景とオスマン建築を巡る歩き方 の詳細解説
ヨーロッパ側の喧騒が嘘のように消え去る、夕暮れ時のユスキュダル。マルマライ(Marmaray)の駅から地上へ出ると、潮風と共に16世紀の空気が流れ込んでくるのを感じます。波の音とカモメの声、そして名匠ミマール・スィナンが遺したオスマン建築が黄金色の光に包まれるこの瞬間の美しさは、15年この街を歩き続ける私にとっても、背筋が伸びるような格別のものです。
先週の火曜日、ちょうど日が傾き始めた午後5時半頃、私はユスキュダル駅のすぐ目の前にあるミフリマー・スルタン・モスクの影にいました。ここは多くの通勤客がフェリーへと急ぐ場所ですが、ふと足を止めて1548年に完成したこのモスクの二つのミナレット(尖塔)を見上げると、時の流れが緩やかになるのが分かります。
駅前は常に人で溢れ返り、初めての方はその混沌としたエネルギーに少し圧倒されるかもしれません。特にフェリーの到着時刻と重なると、案内板を見落としがちです。そんな時は、まず海を正面に見て左手にあるモスクを目印にして、そこから海沿いの遊歩道へと滑り出してください。喧騒を背にしてボスポラス海峡を右手に見ながら歩き出せば、すぐにイスタンブールで最も優雅なプロムナードがあなたを迎えてくれます。ここから乙女の塔(クズ・クレシ)へと続く道は、単なる移動ルートではなく、歴史と海が交差するこの街の真髄に触れるためのプロローグなのです。
アジア側の玄関口、ユスキュダルへのスマートなアクセス術
ユスキュダルへ向かうなら、私は迷わずエミノニュ(Eminönü)かベシクタシュ(Beşiktaş)からのフェリーをお勧めします。地下深くを走るマルマライ線は確かに速いですが、ボスポラス海峡を渡るというイスタンブール最大の醍醐味を逃してしまうのは、あまりにもったいないからです。

景色を独占するための「左側の席」
フェリーに乗る際、心に留めておきたいルールは**「進行方向に向かって左側の屋外席」**を確保することです。エミノニュ埠頭を離れる際、左手にトプカプ宮殿やアヤソフィアのシルエットを眺め、ユスキュダルに近づくにつれて、海に浮かぶ「乙女の塔(Maiden’s Tower)」を一番近い距離で拝めるのがこの席だからです。
先週、仕事帰りの17時15分ベシクタシュ発の便に乗った時のことです。イスタンブール・カルトをかざして23TL(約100円)を支払い、いつものように左側のベンチに座りました。ちょうど夕日が旧市街のミナレットに重なる瞬間で、隣に座っていた地元の老紳士が「今日は最高のご馳走(景色)だね」と微笑みかけてくれました。こうした小さな交流も、船旅ならではの魅力です。
効率か、情緒か:アクセス手段の比較
急いでいる場合や天候が荒れている時はマルマライ線が便利ですが、旅の質を重視するならイスタンブールの渋滞を避けて海を渡るフェリーの賢い使い方と主要路線の解説をマスターしておくのがスマートな旅行者の証です。
| 交通手段 | 所要時間 | 主なメリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| フェリー (Şehir Hatları) | 約15〜20分 | 圧倒的な絶景と潮風、チャイが飲める | 景色を楽しみ、旅情を感じたい方 |
| マルマライ (地下鉄) | 約4〜5分 | 渋滞・天候に左右されず最速 | 移動時間を最小限に抑えたい方 |
| モーターボート (Turyol/Dentur) | 約10〜15分 | 運行本数が多く、待ち時間が短い | 効率よく船で渡りたい方 |
ユスキュダル埠頭に降り立った瞬間の空気
ユスキュダルの埠頭に降り立つと、エミノニュの喧騒とは異なる、どこか懐かしく穏やかな潮風に包まれます。ここには観光客向けの呼び込みはほとんどありません。聞こえてくるのは、カモメの鳴き声と、地元の人々が家路を急ぐ足音、そして近くのモスクから流れるアザーン(礼拝の呼びかけ)だけです。
もしユスキュダルの伝統的な雰囲気が少し保守的すぎると感じたら、別の日にヨーロッパ側の蒼い海と木造洋館に魅せられて:洗練された風が吹く「アルナヴットキョイ〜ベベック」海辺の休日を訪れてみてください。イスタンブールが持つ多面的な魅力をより深く理解できるはずです。
巨匠スィナンが込めた想い:ミフリマー・スルタン・モスク
ユスキュダル駅の地上出口を出て、最初に視界を圧倒するのは間違いなくこのミフリマー・スルタン・モスクです。多くの観光客がそのまま乙女の塔へと急いでしまいますが、それはあまりにもったいない。このモスクは、オスマン帝国史上最高の建築家ミマール・スィナンが、スレイマン大帝の最愛の娘、ミフリマー・スルタンのために持てる技術の粋を集めて築いた傑作だからです。

私が初めてこのモスクの歴史を知ったのは、ガイドを始めて間もない頃、夕暮れ時のユスキュダルで古い歴史学者と茶を飲んでいた時でした。彼が教えてくれた「太陽と月」の物語は、今でもここを訪れるたびに私の胸を熱くさせます。「ミフリマー」という名前はペルシャ語で「太陽と月」を意味します。スィナンは、このユスキュダルのモスクと、旧市街の最も高い丘にあるテオドシウスの城壁からミフリマー・スルタン・モスクへ歴史の重みと絶景を繋ぐエディルネカプ散策で訪れるもう一つの同名のモスクを、緻密な計算の上に配置しました。
スィナン流の「光」を体感する
モスクの内部に入ると、外の喧騒が嘘のような静寂に包まれます。特筆すべきは、ドームを支える壁一面に配置された無数の窓です。スィナンは、ドームの重さを支えつつも、いかに内部に自然光を取り入れるかに心血を注ぎました。
実体験に基づく注意点: 昨日の午後4時40分、ちょうど夕方の礼拝の時間(アスル)と重なってしまい、観光客の入場が一時制限されていました。礼拝中も外から眺めることはできますが、内部をゆっくり見学したいなら礼拝時間の前後30分は避けるのが賢明です。私は20分ほどの待ち時間を駅前の広場で過ごしましたが、イスタンブール・カルトに残高が足りず、チャージ機(Biletmatik)の行列に5分並ぶ羽目になったのは小さな計算違いでした。
ミフリマー・スルタン・モスクで注目すべき5つのポイント
- 二本のミナレット: 王女のために建てられたモスクとしては異例の二本のミナレットを持ち、彼女の家格の高さを示しています。
- 大理石のミンバル(説教壇): 緻密な透かし彫りが施された大理石の美しさは、スィナンの職人技の極致です。
- 100個以上の窓: 壁の上部に配置された多数の窓が、巨大なドームをまるで宙に浮いているかのように軽く見せています。
- 境内のシャドゥルヴァン(浄めの泉): 礼拝前に体を清めるための噴水。そのクラシックな装飾は写真映えも抜群です。
- エディルネカプとの対照: どっしりとした風格のユスキュダルに対し、エディルネカプはより高く繊細。二つを比べることでスィナンの設計の幅広さを実感できます。
「鳥が止まらない」不思議な小宇宙:シェムシ・パシャ・モスク
ユスキュダル駅を降りて海岸沿いを歩き出すと、まず目に飛び込んでくるのがこの小さなモスクです。規模こそ小さいものの「完璧な立地と知性の融合」を体現した、私の一押しスポットです。
このモスクには「クシュコンマズ(鳥が止まらない)・ジャミィ」というユニークな別名があります。当時の大宰松シェムシ・パシャが「鳥の糞で汚されないモスクを」とスィナンに依頼したところ、彼はボスポラス海峡を吹き抜ける北風と南風がちょうどぶつかり合う、この海沿いの地点を選び抜きました。
実際、私が夕暮れ時にここで30分ほど海を眺めていた際、周囲の電柱や船にはカモメが群れているのに、モスクのドームやミナレットにだけは一羽も鳥が降り立たない光景を目の当たりにし、スィナンの科学的な洞察力に改めて驚かされました。
黄金に染まる海辺を歩く:サラジャック海岸の夕暮れ散歩
サラジャック海岸から眺める夕日は、イスタンブールで最も贅沢な時間を提供してくれます。地元の空気に混じって海辺の階段に腰を下ろし、刻々と変わる空の色を眺める時間は、何物にも代えがたい体験です。

昨日の日没前、18時15分に乙女の塔への小舟乗り場へ行くと、チケット窓口には30人ほどの列ができていました。30分以上待つことが予想されたため、私は列に並ぶのをやめ、そこから150メートルほど南へ離れた海岸沿いの階段に座ることにしました。巡回しているチャイ売りから35TLで一杯の温かい紅茶を買い、旧市街のシルエットが紫に染まっていくのを眺める。これこそがユスキュダルの正しい過ごし方です。
サラジャック海岸を満喫するステップ
- 移動する: イスタンブール公共交通機関完全ガイドを参考に、マルマライやフェリーでユスキュダル駅へ向かいます。
- 歩き出す: 駅から海沿いを左(南)へ、シェムシ・パシャ・モスクを目印に5分ほど歩き遊歩道に入ります。
- 場所を確保する: 乙女の塔が見えてきたら、海岸沿いの階段(段々座席)で視界が開けた場所を見つけて座ります。
- チャイを注文する: 巡回しているチャイ売りからチャイを買い、35TL程度の小銭で支払います。
- 日没を待つ: 旧市街のミナレット(尖塔)の間に太陽が沈み、空が黄金色に染まる瞬間を静かに楽しみます。
リニューアルした「乙女の塔(クズ・クレシ)」の楽しみ方
2023年の大規模な修復を経て、乙女の塔(クズ・クレシ)は商業的なレストランから、歴史を静かに語り継ぐ博物館へと劇的に生まれ変わりました。塔のバルコニーに登れば、旧市街のシルエットと近代的な高層ビル群が混ざり合う360度のパノラマビューが待っています。
この歴史的な絶景を堪能した後に、よりモダンで洗練されたイスタンブールを楽しみたいなら、流行の発信地で「今」の息吹を感じる:洗練された大人たちが集う街「ニシャンタシュ」の歩き方を訪れて、ブティックやカフェを巡るのも良い対比になります。
ユスキュダル観光のよくある質問(FAQ)
ユスキュダルを訪れるのに最もおすすめの時間帯はいつですか?
イスタンブールの「世界一の夕日」を堪能するなら、日没の約1時間前にはユスキュダルに到着するのが理想的です。エミノニュやベシクタシュからフェリーに乗り、海の上で刻々と変わる空の色を眺めながら移動するのが最も贅沢なアクセス方法です。駅に到着後、そのまま海岸沿いを散歩してサラジャック海岸の特等席を確保すれば、旧市街に沈む完璧な夕日を拝むことができます。
モスクを見学する際に気をつけるべきマナーはありますか?
ミフリマー・スルタン・モスクなどの礼拝所を訪れる際は、露出の少ない服装(長ズボンや長めのスカート)を選んでください。女性は頭を覆うスカーフが必要ですが、忘れた場合は入り口で無料で借りられることもあります。また、土足厳禁のため脱ぎ履きしやすい靴が便利です。金曜正午や1日5回の礼拝時間は観光客の入場が制限されるため、アザーンが聞こえてから30分間は外観の見学に留めましょう。
乙女の塔のチケット購入やミュージアムパスの利用について教えてください。
2023年にリニューアルした乙女の塔(クズ・クレシ)へは、サラジャック海岸の専用乗り場からボートで渡ります。チケットは窓口のほか、公式ウェブサイトでの事前購入がスムーズでお勧めです。入場料には往復のボート運賃が含まれていますが、現在のところトルコ政府発行のミュージアムパスは利用できないため注意してください。塔内には景色を楽しめるカフェがあり、歴史展示と共に360度のパノラマビューを堪能できます。
最後に:アジア側の夜風に吹かれて
ユスキュダルの波止場に降り立つと、旧市街の喧騒とは違う、どこか穏やかで生活の匂いがする風に包まれるはずです。私が初めてここを案内した友人は、対岸の喧騒を遠くに眺めながら「イスタンブールでようやく深呼吸ができた」と言いました。その感覚こそが、この街の日常に溶け込む第一歩なのだと私は信じています。

もし「乙女の塔」を目の前にした遊歩道が、観光客や自撮りをする若者たちで混み合って落ち着かないと感じたら、無理にその場に留まる必要はありません。そのまま数分、サラジャックの海岸線を南へ歩いてみてください。少し離れるだけで、地元の人たちが静かに釣糸を垂らす、もっと素朴で静かなボスポラスの表情に出会えます。
散策の最後には、ユスキュダル駅近くの老舗「カナート・ロカンタス(Kanaat Lokantası)」に立ち寄ることを忘れないでください。ここの伝統的な「アシュレ(ノアの箱舟のプディング)」は、私の知る限りこのエリアで最も誠実な味がします。
日が落ちた後、ライトアップされた乙女の塔を背にして、ベンチに座ってみてください。目の前を横切る大型船のエンジン音と波の音だけが聞こえる時間は、どんな高級レストランのディナーよりも贅沢な記憶になるでしょう. 明日の夕暮れ、少しだけ足を延ばしてフェリーに乗ってみませんか。アジア側の岸辺で夜風に吹かれたとき、あなたはきっと、この街がもっと好きになっているはずです。
コメント
あなたの考えを教えてください